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減価償却の赤字分は繰り越せるか、(なぜ法人は減価償却しなくていいのか)
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2012.05.16 Wednesday 07:00
減価償却の赤字分は繰り越せるか、(なぜ法人は減価償却しなくていいのでしょうか)
なぜ法人と個人では減価償却の仕方が異なるのかという問いかけに、
納税者が納得できるような明確な答えが返ってくることはありません。
不動産投資の世界では、不合理を感じる時があります。
減価償却の計算もその一つです。
それは、賃貸経営をする投資家にとって避けて通れない問題であり、
減価償却の世界では、同じ事柄でもその取扱いによって、
何百万円という金額の差がでることもあり、結果が正反対になることも少なくありません。
例えば、減価償却は、個人の場合と法人では、
扱い方が違っています。つまり、個人の場合の減価償却は、強制償却ですが、
法人の場合は、償却限度額の範囲内で任意(任意償却)となっている。
簡潔に言えば、法人の場合は減価償却してもよし、
しなくてもよいのが現実なのです。
収益不動産を購入した1年目は、購入費用に加えて、
修繕費など多額の必要経費がかさんできて、
減価償却をしなくても、赤字になることが多いです。
そのため、1年目は減価償却をしないで、
次の年からでも、よいのではないかと考えるのです。その分を翌年以降に繰り越して償却すれば損益が薄められて、
投資家にとっては好都合なようですが、そもそも、
個人事業なら、無償却にしようとしても不可能です。しかし、法人なら、これが出来てしまうのです。
であれば、赤字の年には償却せず、翌年以降に償却すればいいと言うことになる。
ここに、個人と法人では大差があることがわかります。
所得税での減価償却は、個人では、強制償却といって、
本年分は必ず本年に償却して、
必要経費に計上しなければならないことになっています。つまり、本年分の償却費を計上しなくても、
償却したとして税務計算では取り扱われます。
例えば、耐用年数が22年の建物の10年目の減価償却を、
しないからと言って、23年目まで償却できるわけではなく、
あくまで22年で償却します。ただし、減価償却の特例として、建替え病院用建物の特別償却のように、
特殊な場合は、本年度に必要経費に算入しなかった償却不足分を、
翌年度に繰り越して、必要経費に算入できる例外があります。しかし、法人(税)の場合は、
法定の償却限度以内(本来の減価償却額以内)であれば、
いくらの金額を計上してもよいことになっています。
つまり減価償却しても、しなくてもよいわけです。ただし償却不足分を、翌年度に加算することはできません。
ただ、次年度以降に繰り越して、期間を延ばすことはできます。
例えば、耐用年数が22年の建物の10年目の減価償却をしない場合、
個人の場合はあくまで、22年ですが、
法人(税)の場合は、
23年目まで、償却できるということです。特に赤字が出たような場合には、
銀行融資等に備えて、決算書の見栄えを少しでも良くする意味から、
減価償却費を計上しないことがあったり、額を減らすこともあります。
そもそもなぜ減価償却しないのか、それは、最も多いのが赤字の会社です。
特に銀行からの借り入れるために、赤字にしたくなかったり、
またはできる限り赤字の金額を少なくしたい場合です。
法人は、その事業年度の赤字を翌年以降に、
最大7年間、繰り越すことができます。
(ちなみに個人は、その事業年度の赤字を翌年以降に、
繰り越すことができる期間は最大3年間)です。
法人は、7年間赤字を繰越し、その間の利益と相殺できますが、
毎年赤字続きの場合は、いつまでも赤字が、
残っていることになります。
繰越欠損金は、増やしても、最長7年までしか計上できず、
使い切れなければ、切り捨てられてしまうわけです。つまり赤字は、8年目に繰り越すことはできず、
切捨てになってしまいます。
なので、減価償却費を持ってくるようにします。
つまり、このようなときには、あえて減価償却費を損金に計上しないで、
何とか利益を出して、残っている赤字と相殺するようにします。
こうすることにより、赤字分は、減価償却をしなかったことにより有効に使えます。
そのため、減価償却限度額は翌年以降に後送りされ、
将来の損金として使えることになるわけです。
ただまあ、会計上は、減価償却を行うことが原則です。
減価償却しないということは、経費に上げないことですので、その分、利益が多く算出されることにつながり、
むしろ、取引の利害関係者や、銀行や税務署からは、
歓迎されることです。
減価償却の世界でも、よく変化が起こります。
そもそも一昔前までは、90%までしかできなかった減価償却が、
今は、100%まで償却できるようになったことも変化の一つです。
ちなみに、個人の場合は償却方法の届出を出さなければ、
原則、定額法による償却費で算出しなければなりませんが、
法人の場合は、初めから定率法(建物は定額法)が適用されるのです。
これも、個人と法人で違うケースです。
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