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固定資産の償却は定率法を選択すると経費化が早くなる(減価償却を多く取るか少なくするか)
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2017.08.02 Wednesday 22:33
固定資産の償却は定率法を選択すると経費化が早くなる(減価償却を多く取るか少なくするか)について詳しく
固定資産の購入金額は、取得時に全額が経費になるのではなく、
減価償却という方法で数年にわたって経費化していきます。減価償却には、定率法と定額法とがあって、
定額法は、毎年一定の金額が償却費になるのに対して、
定率法では、1年目の償却額が一番大きく、
その後、償却費の金額が年々減っていきます。最終的に定額法も定率法も同じ金額になります。
もっとも建物の減価償却には、
定額法しか使えなことになっていますが、
建物以外の資産の償却方法は、資産の種類ごとに、
定額法か定率法かのいずれかを選択することができます。ところで、
注)平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備及び、
構築物についても、定率法を選択することができなくなりました。ただし、機械設備や器具備品については、
引き続き定率法を選択することはできます。
建物付属設備には、電気、ガス、エレベータ、火災報知設備、外階段、ベランダ、などがあり、
構築物はガレージ、造園、塀、門扉、自転車置き場で、太陽光発電設備は機械設備です。
器具備品は、エアコン、キッチン、浴室、洗面などです。
それでは、どちらの方法を選べば、
有利になるのでしょうか。一般に固定資産は定率法を選択した方が、
早期に経費化できるので節税には有利だと言われます。なぜ定率法を選択した方が税務上有利になるかおさらいします。
投資というからには、買ったものを売って初めて利益が確定します。
なので、購入して、賃貸して売却するまでの総合的評価で、
考える必要があります。
不動産投資家の中には、いい条件ならば、
物件を売ってもよいと考える人もいるでしょう。
もしかしたら数年後、売るチャンスがあるかもしれません。
7年後に高く売れる買主が現れるかもしれません。
それなのに、設備の償却を15年もかけて均等に行うとなると、
かけた費用の全額を経費化してないうちに、手放すことになりますよね。
ところが投資と言うからには、出費した分は、できるだけ早く回収したいものですね。
なので、向こう何年もかけて均等に減価償却するよりも、
定率法で早期にたくさん償却して、
節税効果を先取りしたいと考えるのも当然のことなのです。それに、何より定率法が税務上有利になるのは、
定率法という早期償却を選んだ方が、
翌年に支払う所得税や住民税などの税金額も減るのです。
なので、その年の税金だけでなく
翌年度の税金も確実に減ります。
したがってその年のキャッシュフローだけでなく、
次年度のキャッシュフローも確実に増えます。それに、早期償却で赤字が出た場合には、
個人保有では3年、法人であれば7年にわたって、
繰り越せるようになっています。この繰り越しによっても、節税できるわけです。
というわけで、早く償却した方が節税には有利です。従って、投資家の中では、
定率法償却を目指したいと思う人が多いかもしれません。
それでは、具体例をもとに1年目の償却費を比較してみましょう。パソコン20万円(耐用年数4年)の場合
定額法 20万円×0.250=5万円定率法 20万円×0.5=10万円
このように、最初の年は定率法で償却すれば、
定額法で償却するよりも5万円多く経費計上できます。
自動車 200万円(耐用年数6年)の場合
定額法 200万円×0.167=33万4000円
定率法200万円×0.333=66万6000円
66万6000円−33万4000円=33万2000円
こちらも、定率法が初年度は33万2000円多いですね。もっとも、最終的な償却費の合計金額は、
どちらの方法で行っても同じですが、
このように1年目の償却額は、
定率法が償却額が大きくなるため節税に有利です。というのも、定率法は、2年目以降の資産の未償却残高に、
償却率をかけて計算するため、1年目の償却額が一番大きく、
その後、償却費の金額が年々減っていくわけです。
なので、定率法の方が資産の取得額を、
早期に経費化することができる特徴があります。注意する点は、定率法を選択する場合には、
税務署に対して届け出が必要になります。
届け出がなかった場合には、
個人の場合、定額法で償却しなければなりません。
売却を考えるなら
譲渡所得(売却益)について所得税、住民税が課税されます。
譲渡所得を算式で表すと、譲渡所得=譲渡収入−(取得原価+譲渡費用)
譲渡収入から控除できる取得原価とは、
売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料などですが、
建物の取得原価は購入代金または建築代金などの合計額から、
減価償却累計額を引いた金額となります。
したがって、減価償却を多く取ると、
賃貸経営している期間の税金(不動産所得)は減りますが、
売却したときの税金(譲渡所得)は高くなります。
不動産所得を減らした方がよいのか、
譲渡所得を減らした方がよいのか。
これは個人の所得税率も考えなければなりません。所得税率は段階的に上がっていくようになっています。
不動産所得は、総合課税なので、所得に応じて、
15%〜50%(所得税と住民税合算)で課税されますが、譲渡所得の場合には、短期譲渡(5年以下の所有)で39%、
長期譲渡(5年超の所有)で20%の税率で課税されます。
所有する期間によっても税率が異なるので、
長期保有を目指すのか、
短期で売却するのかによっても成果は変わってきます。投資家の中には、建物金額を大きくして、
早期に減価償却を多く取っている方も多くおられます。
もっとも、減価償却を定率法で早く取る、
または修繕費をすべて早期に経費にしてしまうことは、
長期に渡って経費に計上する分を、短期で計上するだけのことです。
定率法を選択して減価償却をすれば、
減価償却費は初年度に近いほど多くなりますが、
経年とともに経費にできる部分が少なくなるので、
当然税金が徐々に高くなってしまいますので、
キャッシュフローに影響が出てきます。一方、早期で節税をやり過ぎて赤字の申告をすれば、
融資の審査が通りにくくなります。さらに、減価償却を大きく計上して、
赤字にすれば青色申告控除は引けませんから、
所得を減らす恩恵がなくなります。また、不動産所得が赤字になると、
不動産購入の支払利息のうち、
土地を購入するためのローンの利息部分は、
必要経費に計上できなくなります。したがって赤字になれば、経費にできない部分も、
出てきますので、この辺も検討課題ですね。売却を考えた不動産投資なら減価償却を早期にとらず、
あえて長い期間とるのも選択肢のひとつですよね。これは、融資対策にも言えることです。
大きく経費計上することを選択すれば、
税金が少なくなりますが
逆に銀行の評価が悪くなるために、
注意する必要がありますね。
減価償却の仕方をおさらいしておきますと、
減価償却資産といっても、建物や設備などいろいろありますが、
小額の設備では、単年度の経費で落とすこともできます。
エアコンの青色申告を行う場合は、
エアコンの購入代金が30万円未満の場合は、
単年度ですべて経費にすることが可能です。
また、10万円以上、20万円未満の少額減価償却資産の場合、
資産計上して3年間に渡って均等に償却していくこともできます。
あるいは、エアコンは器具備品で法定耐用年数は6年ですので、6年間で経費化していくやり方も取れます。
どれを採用するかは大家さんの自由です。
融資を受けるために、赤字にしたくないのであれば、
6年で減価償却する方法がいいでしょう。節税に重点を置くのなら単年度償却がいいでしょう。
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